Q:ホールに近づかない位置がない場合のバンカー内でのアンプレイヤブルでの救済 2016.02.12

JGA規則裁定集20-3d/2「バンカー内の・・・ホールに近寄らずにはそのバンカー内にプレースできない場合」には『1打の罰を受け、バンカーの外側で、ホールと、球のあった箇所とを結んだ後方線上に球をドロップ』はよく分かるのですが、「プレーヤーがどの規則に従って処置していようとしても、その球がバンカー内の適切な基点よりもホールに近づかずには止まらない場合、同様の原則が適用される。」というのがよく分かりません。
@ たとえば、バンカー内のホールから一番遠い端に落ちたボールの場合、アンプレヤブルとみなした場合で、JGA規則28bcを選ぶ場合、ドロップできる場所がありません。また、規則20-2bでは「該当する規則によって求められているコース上のドロップ箇所に直接落ちなければならない。これに反するドロップが行われたときは、規則20-6と規則20-7が適用」となっていますので、規則20-6「誤所に、または規則に反してドロップされたりプレースされた球は、それをプレーする前であれば、罰なしに拾い上げることができる。その後で、プレーヤーは正しい処置」これは再ドロップの回数制限に入るのは論理的におかしい(無限に続いてしまう)ので、「公正の理念(規則1-4)にしたがって1打の罰を受け、バンカーの外側で、ホールと、球のあった箇所とを結んだ後方線上に球をドロップ」となるのでしょうか。もちろん規則27-1aストローク&ディスタンスでも問題ないとは思いますが。
A さらに、バンカー内のホールから一番遠い端よりちょっとだけホールに近いところに球がある場合、規則28によりアンプレヤブルで1打罰でバンカー内ドロップはできるはずなので行おうとしても、傾斜ではじめあった位置よりホールに近づけば、再ドロップ。再ドロップでも近づけば(傾斜でそうなる)、規則20-2c「再ドロップした際に球がコース上に最初に落ちた箇所にできるだけ近い所に、その球はプレース」ですが、傾斜があり「ホールに近づかないようにプレースして球が止まる所はどこにもない」となりJGA規則裁定集 20-3d/2と同じ状況になる。するとさらに1打罰で『バンカーの外側で、ホールと、球のあった箇所とを結んだ後方線上に球をドロップ』になるように思います。つまり合計2打罰でバンカー外の後方ドロップとなるようにも思えます。これは前記@よりも1打分厳しくなり“公正の理念”という言葉にそぐわないように思いますが、規則上の裁定はこれで良いのでしょうか?

好也厭離さん

回答
ご質問ありがとうございます!
規則20-3dでは、プレースやリプレースしようとした球が止まらない場合、ホールに近づかず元の場所(プレースやリプレースしようとした場所)にできるだけ近い場所にプレースすることを求めています。それがハザード内であれば同ハザード内で処置しなければなりません。裁定20-3d/2では、バンカー内の後方で起こった場合にホールに近づかずに球が止まる場所がない場合、公正の理念に従い1打罰を付加してバンカーの後方にドロップすることを認める考え方を示したものです。この裁定の回答にある
「プレーヤーがどの規則に従って処置していようとしても、その球がバンカー内の適切な基点よりもホールに近づかずには止まらない場合、同様の原則が適用される。」
という一文は、裁定例20-3d/2では動かせる障害物(規則24-1)に従って球をリプレースしようとした時のことを述べていますが、それ以外の規則に従ってリプレースやプレースをしようとした時に同じようなことが起きる場合に、この原則を適用する、といったことを示しています。例えば、動かせない障害物やカジュアルウオーターからの救済を受けドロップしたが規則20-2cの再ドロップ要件を満たす場所に球が行き再ドロップしたところ再びそのような場所に行きプレースすることになったが、その場所に球が止まらず、同バンカー内でホールに近づかずに球が止まる場所がない場合、あるいは他のプレーヤーのプレーの妨げになるために球を拾い上げたが、その球をリプレースしようとしても球が止まらず同バンカー内でホールに近づかずに球をプレースできる場所がない場合、などです。
@のケースでは、アンプレヤブルの処置をとりたい場合、同バンカー内でホールに近づかない球の後方延長線上や2クラブレングスの範囲は存在しないことになるので、前回プレーした場所からプレーすることを選択するしかない、ということになります。それにもかかわらず、後方延長線上や2クラブレングスの範囲内のつもりでドロップしたとなるとアンプレヤブルの規則・規則28に違反してドロップしていることになるので、そのままプレーした場合は誤所からのプレーの2打罰が加えられることになります(アンプレヤブルの1打罰と合わせて計3打罰、違反が重大なら誤りを訂正しなければ失格)。このように規則に反した場所にドロップやプレースした場合は、プレーする前であれば誤りを訂正することで罰を受けずに済むよう規則20-6で定めています。ただし@のケースでは規則20-6に従い訂正する場合、後方延長線上や2クラブレングスの範囲内のドロップ場所はそもそも無いので前回プレーした場所からプレーするしかありません。この規則20-6と規則20-2cの再ドロップは全く別の規則ですので分けて考えなくてはいけません。規則20-6では誤った処置に対してプレーする前であれば誤りを訂正できることを定めているのに対し、規則20-2cでは正しいドロップを行った結果、2クラブレングス以上転がったり、基点よりホールに近づいたり、と規則20-2c内で定めている再ドロップ要件を満たす場所に球が行って止まった場合に再ドロップすることを求めているものです。規則20-6は誤りを訂正する時に同じ規則内で選択肢を変えることができます。例えばアンプレヤブルの処置の2クラブレングス範囲内を選択したつもりで誤った場所にドロップした後、規則20-6に従い誤りを訂正する際に後方延長線上にドロップすることに変えても問題ありません。それに対し規則20-2cにおける再ドロップは、誤りがあるわけではなく正しいドロップをしたものの再ドロップ要件を満たす場所に行った、ということになりますので途中で選択肢を変えることはできません。
Aについては、ご質問内容にある通り、僅かな範囲のドロップ範囲にドロップして処置を進めることはなんら問題ありませんが、ドロップしたところホールに近づいたので再ドロップしたところ再びホールに近づいたら、再ドロップ時に最初に地面に落ちた箇所にプレースしなければならず、そこが傾斜で球が止まらないということであれば、まさに裁定例20-3d/2の状況が発生したことになるので、1打罰を付加して(アンプレヤブルの1打罰と合わせて合計2打罰)バンカーの後方にドロップすることになります。合計2打罰となると1打分厳しい感もあるかもしれませんが、アンプレヤブルの処置はプレーヤーが自ら選択するものです。ドロップ範囲がバンカーの端の狭い範囲で、このような事態が起きる可能性が考えられるのであれば、プレーヤーは最初から前回プレーした場所からプレーすること選んだり、あるいはホールと反対方向に向かってあるがままでプレーすることも出来たわけです。
ちなみに、バンカー内の動かせない障害物やカジュアルウオーターからの救済を受ける時、罰無しでバンカー内でニアレストポイントから1クラブレングス範囲内にドロップする他に、1打罰でピンと球とを結んだバンカーの後方延長線上にドロップすることもできますが、これは、通常ではない状態に対しての救済だからバンカー外にドロップすることを認めたものです。それ以外で1打罰でバンカーの外に出す方法はストロークと距離に基づく処置(前回プレーした場所から1打罰でプレー)以外に基本的にはありません。裁定20-3d/2は、このように規則が定めていない状況が発生し、公正の理念に従い処置する場合の考え方を示した一例、ということになります。

Mr.golfbaka