Q:全米オープンでダスティン・ジョンソンの球が動いた件 2016.07.01

全米オープンで話題になったダスティン・ジョンソンの件についてのご質問が重複しましたので以下にまとめさせていただきました。

Mr.golfbaka

今回の全米オープン D・ジョンソン初優勝での5番ホールの件。グリーン上で動かしたのがプレーヤーとの採決になり1ペナとの事。動いたボールは元にリプレースしなくていいのでしょうか?
よろしくお願いいたします。

松尾健さん

いつも参考にさせていただいております。早速ですが今年の全米オープンの不可解な競技委員の裁定についての質問です。多くの選手からもコメントが寄せられていますが、ありえない事が起こりあわてて規則書、裁定集を一生懸命読んでますがスッキリしません。DJはアドレスに入る前クラブを近づけた時にボールが動きました。それがボールを動かす行為となり1打罰の裁定を受けました。規則18-2であると思われますが、規則18−2に球が動かされた場合、その球はリプレースされなければならない。(省略)規則18の違反の罰はストロークプレーでは2打となります。ビデオでみる限りリプレースは行っていませんし、その場で競技委員を呼んで裁定を受けて問題なしとなってますのでプレーを継続してますので戻ることも出来ません。1打罰の裁定とのことですが1打罰になるとゆうことは誤所からのプレーもしくは規則18の違反で2打罰が加算され3打罰なのではないのでしょうか。スッキリしませんし1打罰だから受け入れてもたいした問題にはなりませんでしたが、3打罰だったらどうなってしまうのかも興味があります。どちらにしても後味の悪い競技委員の裁定でDJを始め一生懸命プレーをされている選手がかわいそうです。つまらない質問で恐縮ですがよろしくお願いします。

アマゴルファーさん

先日の、全米オープンの最終日5番ホールのD・ジョンソンのボールが動いた件について質問お願いします。今年からのルール改正で球が動いた原因が自分になければ『アドレスした後に』ボールが動いたのは、無罰となったと思います。映像を見る限り、アドレスに入る直前に球がパター側に1ディンプル程度、動いたように見えます。ジョンソンも動いたことを確認して『球を動かした原因は自分にはないこと』を近くの競技委員に確認して、無罰でそのままプレーしました。しかし、後になって1打罰の裁定となったのはご存知の通りです。
ここで疑問は以下2点です。
1.芝生の起伏なのかエアレーションなのかあの程度、あのタイミングで球が動くことは我々も稀にあります。その場合、1ペナで元に戻してプレーが妥当なのか? 球が動いたのは重力のため、無罰なのかの判断はどのようにしたらいいか?(通常映像も証人もないものです)
2.全米オープンでペナルティをとられるなら、球を動かした上、誤所からのプレーの罰は取られないのか?(強引ですが、球が動いた後仕切り直しでマークしたのが戻したと解釈されたのか?)
長くなりましたが、アマチュアの競技でも稀に起こり得る現象なので、対応の仕方のご教示、宜しくお願いします。

麻ポンチさん

回答
皆さまご質問ありがとうございます!
まず、今回のルーリングについてですが、レフリーの方の判断は特段間違ってはいなかった、ということが言えます。ゴルフは一般的にレフリーがいないスポーツと言われていますが、プロの競技などではレフリーが存在します。そして、ゴルフ規則ではレフリーには裁定権があることを定めています(規則34-2)。裁定権があるので、Dジョンソンの件についても、そのレフリーが、球を動かした原因がプレーヤーにあるかないか、またそれによるその後の処置についても裁定することができるわけです。ただしこのような場合、球を動かした原因がプレーヤーにあるかないかを決めるためには様々な証拠や証言などがなければ適正に判断するのは難しいことでもあります。レフリーに裁定権はあるが、そのレフリーの(証言などを考慮しない)勝手な判断に委ねられるべきものではない、ということです。恐らくそのレフリーの方は、その場で判断するのが非常に難しい状況であったのではないかと思います。このような状況では、レフリーが得られる情報を全て考慮した上でどちらかに判定してプレーヤーはそれに従ってプレーするのが原則です。そして、委員会はレフリーの裁定を訂正することもできるよう規則では定めています。ですから、そのレフリーの方は後で罰が加わる可能性を告げておいた、ということかと思います。レフリーの裁定に従ってプレーした場合、誤所からのプレーの罰は課せられません。ですから、その後に球を動かした原因がD・ジョンソンにあったということになっても球をリプレースする必要はなかった、というわけです。これと同じ例は、裁定例34-3/7に記載されています。
アマチュアの競技では、一般的に競技委員がいると思いますが、競技委員=レフリーではありません。委員会がレフリーとしての権限を与えている競技委員であれば、紛議が生じた時に裁定することができますが、そうでない競技委員は本当は裁定することができません(実情は違うかと思いますが)。もし、アマチュアの競技で、今回の件のような事が発生した場合、裁定する人が近くにいないようであれば、両方の可能性を考え2つの球でプレーしておくのが良いと思います。一つはプレーヤーが原因ではないものとしてあるがままでプレー、もう一つはプレーヤーが球を動かしたものとして球をリプレースしてプレーしておく、ということです。
今回のレフリーの裁定については規則的に間違っていない、ということがあまり知られていない一方で、プレーしている選手や観戦している側からしてみれば、アマゴルファーさんの言う通り疑問が生じるのもまた事実かと思います。このような事案も、ゴルフ規則の改正にきっと繋がっていくのではないかと思います。

Mr.golfbaka