Q:アドレス後に球が動き、そのままプレーした場合の裁定 2015.02.08

先日私のホームコースのゴルフ場で起こったことの質問です。
私が、グリーン上でボールをリプレースし、パターをボールの後方に置いた(足は、未だアドレスの体制になっていませんでした)ところ、ボールに触れてはいませんが、置いた場所が傾斜だったため半回転くらいボールが動きました(ホールよりも遠ざかりました)。この時は、風も微風でたいして吹いていませんでした。私は、動いて止まった位置からそのまま、打ってホールアウトしました。ラウンド後、スコアカード提出前にゴルフ場のスタート室にこの場合の処置を確認したところ、
「パターのソールをボールとホールを結ぶ線上に置いた時点で足まで構えたか否かにかかわらず、アドレスをとったとみなす。その後、傾斜で動いた場合は、元の場所に戻して1打罰。しかし、元に戻さなかったので誤所からのプレーになり失格」
と言われました。ボール半回転で、しかもホールから遠ざかったのに失格とは、納得が行きませんが、ゴルフ場の裁定は、正しい処置だったのでしょうか?

吉田秀隆さん

回答
ご質問ありがとうございます!
ご質問のケースはアドレスした後に球が動いたことになりますので、規則18-2bが適用されます。つまり、1打罰でリプレースしなければならない、ということです。そしてそれに従わずに(規則18に違反して)誤所からプレーしたことになるので2打罰が課せられ(この場合最初の1打罰は付加しない)、球はそのままでプレーを続けなければいけません。誤所からのプレーの違反が重大とみなされた場合は2打罰の上、正しくリプレースした場所からプレーし直さなければ競技失格ですが、ご質問のケースでは、どう考えても重大な違反になるとは思えませんので、要したストロークに2打罰を付加して提出すれば問題なかったはずです。
今回頂いたご質問は様々な規則が絡んできますので一つずつ考えてみたいと思います。

1
ゴルフ場の回答の文言中にある”アドレス”についてですが、『球とホールを結ぶ線上にクラブを置いた時点』ではなく『球の直前か直後にクラブを置いた時』にアドレスしたものとみなされます。球とホールを結ぶ線上にクラブを置いた場合、それがパットの線(プレーヤーがパットした後に取らせたい線)にかかれば規則16-1aの違反により2打罰が課せられます。つまり左右の傾斜がそれほどない場面では、球とホールを結ぶ線上に触れると違反になる可能性がある、ということになります。
関連規則など…規則書の用語の定義『アドレス』、規則16-1a

2
アドレス後に動いた球についてです。アドレス後に球が動いた場合、原則としてはプレーヤーが球を動かしたものとみなされます。すでにスイングに入っておりそのままプレーした場合を除き1打罰でリプレースしなければなりません。アドレス後は局外者(動物、風で飛んできた物など)や風や水といったプレーヤー以外のものが原因であることが確実である場合はプレーヤーが原因とはみなされませんが、そうではない場合はプレーヤーが原因とみなされます。ご質問のケースのように傾斜によって球が動いた場合もプレーヤーが原因とみなされます。もし、アドレス前に球が勝手に動いていたのなら、罰はなく球はそのままプレーすることになります。また、アドレス後でも明らかに風や水、地震などによって球が動いた場合、プレーヤーに罰はなく、球はそのままプレーしなければなりません。局外者が動かした場合は罰無しでリプレースします。
関連規則など…規則18-1規則18-2

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誤所からのプレーは、該当する規則に基づき2打罰を課すよう規定しています(ご質問のケースでは規則18)。そして誤所からの重大な違反があった場合、2打罰の上、正しい場所からプレーしなければなりません。重大な違反があったかどうかは最終的には委員会の裁定によるところではありますが、裁定集にあるいくつかの例を参考にすれば、ご質問のケースは重大な違反とはなりません。裁定集では、例えばバンカーからプレーすべきところスルーザグリーンからプレーした場合や、本来打つべき場所より100ヤードもホールに近い場所からプレーしたような場合に重大な違反になるとしています。ご質問のケースでは球が半回転してホールから遠ざかったとのことですが、もしそれが数回転して50cmほどホールに近付いたのをそのままプレーしたとしても重大な違反とはならず2打罰でそのままプレーする、と裁定すべきかと思います。
関連規則など…規則20-7c

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スコアカードの提出と委員会の裁定についてです。ご質問のケースではスタート室に競技失格と言われたとありますが、ゴルフ場のスタッフ=競技委員とはならないので、その後吉田さんが競技失格と思ってしまいスコアカードを提出していなければそれまでかと思いますが、2打罰を付加した正しいスコアカードを提出していれば競技失格とされるべきではありません。もし委員会の間違った判断で競技失格とされたのなら、それは取り消されるべきです。規則34-1bでは、競技が終わった後は基本的にどのような罰も取り下げたり修正したりしてはならないことを定めていますが、この規則は委員会の間違いについてのものではありません。委員会の間違いを修正することについては時限などありませんので、委員会は間違いに気づいたらいつであろうと修正すべきです。
関連規則…規則34-1b

Mr.golfbaka